――ずっと一緒にいようよ……
その言葉は、まるで告白のようで。
想いを言葉に、言葉を伝え。
そして二人は、進まないことを決めた。
魔法少女リリカルなのは Dark Angel―堕ちた天使の物語― Part2.告白―想いを曖昧にして―
「んーどうしようかなぁ……？」
太陽が落ち始め、夕暮れが周りを支配している中、なのははポツリとつぶやいた。
今日の機動六課での仕事は午前中で終わり。午後からは特に予定は無かった。
なので、なのははヴィヴィオを連れて、こうして街まで買い物にやってきたのだ。
「どうしたの、なのはママ？ 考え事？」
「――あーうん、ちょっとね」
先ほど買ったぬいぐるみを抱きながら、ヴィヴィオがなのはの顔をグイッと覗き込み尋ねる。
そんな娘になのはは歯切れの悪い答えを返した。
「――ヴィヴィオに言えないことなの？」
ヴィヴィオの瞳が少し不安で染まっていたのをなのはは見逃さなかった。
そんなつもりは無かったとしても、どうやら不安にさせてしまったようだ。
なのはは慌てて、ヴィヴィオを抱きよせながら言葉を返す。
「ああ、ごめんねヴィヴィオ。私が考えていたことは、全然大したことじゃないんだ」
なのはは一度言葉を止めて、少し頬を赤く染めながら言葉をつづけた。
「今からね、ユーノ君のところに行こうかなぁ……と思ってね」
「ユーノさんのところに？」
うん、となのはは答えて、頭の中でユーノの予定を思い出す。
たしか、今日は夕方には仕事が終わると言っていた。そして、明日は休みだともなのはは聞いていた。
ちなみになのはも明日は休暇。ヴィヴィオも学校は休みなのだ。
久しぶりにユーノのところへ遊びに行こうかなぁと思った次第なのだ。
（――けど、いきなり押しかけたら迷惑かなぁ……）
そのことが先ほどから引っ掛かっていて、なのはの決定を遅らせていた。
会いたいといえば、会いたい。しかし、迷惑をかけたくないといえば、かけたくない。
この相反する、非常に複雑な気分が、なのはを悩ませているのだ。
「――行きたい！」
「――えっ！？」
「久しぶりにユーノさんのところに行きたい！」
目を輝かせて、ヴィヴィオがなのはの手を引っ張った。
そんなヴィヴィオの態度に少しビックリしながらも、なのはは答えた。
そして、同時に心の中で、ヴィヴィオが行きたいなら行こう、という結論を導き出した。
「う、うん。じゃぁ、ユーノ君の家に遊びに行こうか……」
「やったー！ ユーノさんといろんなお話しよ！」
すっかり笑顔になったヴィヴィオに、迷惑掛けちゃダメだよ、と言いながら、なのはは手元の時計を見た。
そろそろ、夕御飯に差し掛かろうとする時間だ。
（食材を買って、ユーノ君に手料理でも御馳走しようかなぁ……）
一度決めてしまえば、なのはのとる行動はとても速いものだった。
「よしっ、ヴィヴィオ、今日は手作り料理をユーノ君に御馳走しよう！」
「おっー！」
元気よく片手を振り上げて笑顔になるヴィヴィオを眺めながら、なのはもまた微笑んだ。
＊＊＊＊＊＊＊＊
ピンポーンというチャイムの音がユーノの部屋に響いた。
「んー誰だろう？」
訪ねてきた相手を考えながら、ユーノは玄関へと向かっていく。
時間帯としては夕方。こんな時間に訪ねてくるのは、何かの勧誘か宅配物だろうと思いながら玄関の扉を開けた。
そんなことを考えていたからだろう。
相手の顔を見て少し茫然してしまったのも、相手が飛びついてきて少しよろけてしまったのも。
「――ユーノさんっ！」
そんな声とともに、腰に誰かがギュッと抱きつく感触。
ちょっとばかりその勢いが強かったせいか、ヨロッと後ろに下がってしまったが、何とか倒れずに済んだ。
そしてユーノは、その原因であろう少女を抱きとめた。
「――ヴィヴィオ！ それに――」
ん〜、と頬ずりするヴィヴィオに目をやりながらも、その奥にいる女性を見る。
そこにいる女性は、いつも通り優しく微笑んでいた。
「――なのは……」
「うん、なのはだよ。いきなりで迷惑だった？」
ちょっと不安げにこちらを見てくるなのはを見て、ユーノは慌てて言葉を返す。
「そ、そんなことないよっ！ ただ、ちょっとびっくりしただけだから……」
ちょっとどころか、かなり驚いたのだが、ユーノはそれを口にせず、なのはに笑いかけた。
その言葉に安心したのか、なのはもホッと胸をなでおろしていた。
「ユーノ君、もう夕御飯食べちゃった？ もしよかったら、作ろうと思ったんだけど……」
「ううん、まだ食べてないよ」
「なら、よかった。じゃあ今から作っちゃうね。ヴィヴィオもいつまでも抱きついてないで、中に入って」
はぁい、と返事をしてユーノに抱きついていたヴィヴィオが、ユーノの手を握ってリビングへと向かっていく。
「ユーノさん、いっぱい楽しいお話をして！」
「んー楽しい話か……何から話そうかなぁ……」
ユーノとヴィヴィオはリビングにある大きめのソファーに座る。
そんな様子を眺めながら、なのははキッチンへと足を運んだ。
「そういえば、ヴィヴィオと会うのも２週間ぶりくらいかな？」
「うん、それくらいぶりかも〜」
ニコニコとしながら、ユーノの右腕にヴィヴィオがピタッとくっつく。
そして、鼻を大きく吸って、そして目をつむった。
「ユーノさんのいいにおいがする……」
「えっ、そんな匂いしてるかなぁ？」
頬を掻きながらユーノはクンクンと自分の香りをかいでみたりしてみる。
そんなことをしながら、ユーノは腕に抱きつくヴィヴィオの髪をあいた左手で梳いた。
少しくすぐったそうに、そして気持ちよさそうにヴィヴィオが身をよじらせる。
（――それにしても、懐かれたなぁ……）
ふと思うことは、幸せそうに目を細めている少女のことである。
出会ってからたいした時間を過ごしたわけではないけれど、それでも愛しいと思えてしまう。
ヴィヴィオが向けてくる好意がどういった種類ものか分からないけれど、そんなことは大したことないと思ってしまう。
（――うん、まぁ、好かれていて悪い気は全然しないから別にいいんだけどね……）
もう一度ヴィヴィオの顔をユーノはのぞいた。
純真無垢な笑顔がそこにある。その笑顔を失いたくないなと心の底から願ってしまう。
そんなことをボーと考えていると、キッチンの方から早速いい匂いが漂ってくる。
それと同時に、トントントンと軽快な音も聞こえてくる。
（――なんかいいなぁ……こういうのって）
なんだか言い表せないような暖かさが自分の周りを包んでいるようだと、ユーノは感じていた。
このひと時を、ずっとずっと、続けていきたいとも思ってしまうくらいだった。
「んーユーノさん、そろそろ何かお話して」
「んーどうしようかなぁ、何を話そう……」
そんな会話を続けながら、ユーノとヴィヴィオは料理ができるのを待っていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊
「よっし、出来た！ ヴィヴィオ〜運ぶの手伝って」
「はぁーい」
リビングでユーノと話をしているヴィヴィオを呼んで、なのははコンロの火を消した。
作ったのはふっくら卵のオムライスと、コーンスープにトマトのサラダだ。
どの料理もおいしそうな匂いが漂っている。
「きょうの料理もおいしそうだよ、なのはママ」
「ありがとう、ヴィヴィオ。じゃあ、サラダをテーブルに運んでね」
「うん！」
ヴィヴィオが料理を運んでいくのを見届けてから、なのはもまた料理を運んだ。
テーブルには既にユーノが座っていて、ヴィヴィオもすでにユーノの隣に座っていた。
「おまたせ、ユーノ君」
「そんなことないよ、なのは。それにしても、おいしそうな料理だ」
「ふふっ、ありがとう」
ここしばらく手料理というものから縁遠かったユーノは率直に感想を言った。
その言葉が嬉しかったのか、なのはも幸せそうに微笑んだ。
「早く食べようよ、なのはママにユーノさん」
「うん、そうだね。せっかくのなのはの料理だ。冷めちゃう前に食べようか」
ユーノが手を合わせる。それにならってヴィヴィオも手を合わせた。
もちろん、なのはもユーノの前の席に座ってから手を合わせた。
「「「いただきまーす」」」
そこには、たしかに、暖かな食卓が出来上がっていた。
＊＊＊＊＊＊＊＊
「――うにゃぁ……」
「すっかり眠たいみたいだね、ヴィヴィオは」
「すぅ――」
ヴィヴィオの頭を撫でながら、なのははクスッと笑った。
現在ヴィヴィオはソファーに座るなのはの膝の上で夢の世界へ旅立っているところだ。
ユーノもなのはの隣に座り、二人の姿をほほえましく見ていた。
そこにもまた、先ほどユーノが感じていた“暖かさ”が広がっていた。
ユーノがそれを感じていたように、なのはもまたその空気を感じていた。
幸せというものがカタチをもって存在するというのならば、こんな感じだろうとも思っていた。
そして、同時に、この空気を離したくないとも、失いたくないとも。
曖昧に広がっているこの想いが、何よりも愛おしかった。
だからなのかもしれない。
なのはが突然ユーノに言葉を投げかけたのも。
「――ねぇ、ユーノ君……」
「――なに、なのは？」
微妙な空気の変化を感じたのか、ユーノは少し真面目な言葉で返した。
そんなことはお構いなしに、なのははそっと自分の肩をユーノに寄せた。
突然の行動にユーノの体がビクッと驚いたのを感じることが出来たが、それを無視してなのはは言葉を続ける。
「――ずっと、一緒にいようよ……」
「――」
ユーノは答えない。それでも、なのはの言葉は止まらない。
「これからも、ずっとずっと……このままであり続けたい……」
それは、告白のようで告白でない言葉。
愛の告白とは正反対の意味を含んだもの。
前に進んでいくためではなく、その場にとどまるための言葉だった。
そうこれは、友達以上、恋人未満な関係を続けていきたいという意思表示。
この関係が変わらないための変化を、なのはは望んだのだ。
「――うん……ずっと一緒にいよう、なのは……」
なのはの言葉にユーノは肯定した。
恋人たちが囁き合うようなこの言葉の本当の意味を理解して。
そう、ユーノはなのはのその言葉を愛の告白だとは思わなかった。
この言葉の本当の意味を理解した上で、なのはの言葉に肯定した。
先には進まないという意味を、しっかりと理解して答えたのだ。
「――ありがとう、ユーノ君……」
「――うん……」
なのはが目をつむるのを見てから、ユーノは天井を仰いだ。
（――なのはには、いつも驚かされる……）
ユーノが一番最初に感じたことはそれだった。
なのはが、関係を先に進めたくない無いと思っていることはずいぶん前から知っていた。
（そう、二年前のあの時から分かっていたことじゃないか……）
二年前、今より少し、なのはとの関係が近かったころ。
触れるか触れないかの、それでも確かなキスを二人は交わしたのだ。
それは、雰囲気に流されただけのキスだったかもしれない。
それでも、ユーノはそこに“好き”という気持ちがあると思った。
なのはが友達以上の関係を望んでいると思ったのだ。
しかし、返ってきた言葉はユーノの想像とは違ったもの。
『――ユーノ君、やっぱ止めにしようよ……』
なのはの放った言葉の意味は拒絶。
それは、その場に踏みとどまる言葉だった。
『私ね、想うんだ……きっと、今までのままの方がいいんだって……』
その時、ユーノは理解したのだ。
なのはは自分と同じものを望んではいないのだと。
『――今日のことは忘れて、明日からは昨日までと同じように過ごしたい……』
『なのはは、それで幸せ？』
『――うん……ごめんね、ユーノ君……私、わがままな女の子だね……』
『謝らないで、なのは。君が望むなら、僕もそれを望むよ』
その時も、今と同じようになのはの言葉を受け入れた。
大切な存在だからこそ、大好きな人だからこそ。
なのはの望みを、出来るだけ叶えたいとユーノは想ったのだ。
――それが、自分の望みと違ったとしても。
その日、一歩踏み出そうとした関係は、一歩も進むなく終わりを迎えた。
その日の出来事は、なのはの望んだとおり、無かったことになった。
それから、二人は、友達以上恋人未満の関係であり続けた。
ずっと、ずっと。二年間ものあいだ。
（――なのはの気持ちは、あの頃から変わりはないんだ）
過去を思い返し、ユーノはそう結論付けた。
（僕も、今のままで幸せだ、これ以上は望むものじゃない……）
二年前のなのはの答えと、今のなのはの告白を、ユーノは正しく理解していた。
現状が幸せなら、それ以上が必要なのだろうか？
ずっとそのままの関係が、幸せになりえるのだ。
そして、なのははそう望んだのだ。
友達以上恋人未満、そんな曖昧な関係を続けたい、壊したくない、変えたくないと。
そしてまた、ユーノもその意思を受け入れたのだ。
そして、ユーノは物思いにふけるのをやめて、そっと目を閉じた。
肩にかかるなのはの体温と、かすかに聞こえるヴィヴィオの寝息に耳を傾けながら。
暖かな、仮初めの幸せにユーノは身を預けた。
――その日。二人は変わることを恐れ、変わらないことを肯定した。
＊＊＊＊＊＊＊＊
目の前に映ったのは、満天の星空だった。
どこまでも広がる夜空。そして宝石のように散りばめられた星々。
その遠くにある輝きが、二人を淡く照らし出していた。
『――星がきれいだね……』
『――うん、だけど君のほうがきれいだよ……』
二人の間には、彼女と彼の娘が幸せそうに眠っていた。
その様子を見て、彼女たちは顔を見合せて微笑みあった。
――それは、過ぎ去ってしまった過去の夢。
――世界がまだ光に満ち溢れていた頃。
その一秒一秒が、かけがえのない時間だった。
幸せを求め、それを得て、護っていこうと想った。
ずっとずっと。
終わってしまうと知っていても。
永遠に。
――だけど、現実は残酷だった。
次に目に映ったものは、どこかの病室だった。
そこには冷たくなってしまった彼の姿。
――突きつけられたのは、どうにもならない現実。
――片方の光を失ってしまった世界。
それでも、彼女は片翼で飛び続けた。
彼と交わした約束を護るために。
まだ世界は光に満ち溢れていると信じて。
――そして、夢はいつもの終わりを迎える。
目に映るものは、あたり一面の銀世界。
その中で異彩を放つ、炎揺らめく雪景色。
そして、血まみれで、もう目を覚まさない娘を抱く、己の姿。
――そう、すべてを失った。
――持っていた希望も、進むべき光も。
――もう、信じるモノも無くなった。
ゆっくりと彼女は眼を開けた。
「――いつもの夢。私という存在の理由……」
この夢こそが、彼女の始まり。
彼女がここにいる意味。
「――さぁ、行くよ。彼と彼女(あいするもの)のもとへ……」
そして彼女は夜空へと飛翔した。
漆黒に染まった翼を羽ばたかせて。
そしてその日も、一つのレリックが彼女のもとに渡った。
＊＊＊＊＊＊＊＊
なのはとヴィヴィオの二人と久しぶりの休暇を過ごしたユーノは、いつも通り無限書庫へと足を運んでいた。
昨日は一日使って、ミッドチルダの中央部に出来た娯楽施設まで行ってきたのだ。
ヴィヴィオは勿論、なのはも喜んでくれたことに、ユーノは少しだけ幸せな気分に浸っていた。
そう今この瞬間までは。
『――そう、いやそうな目で見るな……』
「――それは君の気のせいじゃないかな？ それとも心当たりがあるのかい？」
『…………』
ユーノの目には、画面越しに気まずそうに目をそむけた親友の顔が映っていた。
その親友の名は、クロノ・ハラオウン。
１０年来の付き合いで、若いながらも提督という階級をもった友人だった。
ユーノにとって良き友人であると同時に、大量の仕事を投げてくる厄介な友人でもあった。
たとえば、今回のように、いきなりS級依頼を二日以内でと頼まれたりするのだ。
「――まぁ、必要なら仕方がないさ……ただ、もうちょっと配慮してくれると助かるよ」
『すまない……今回の件は、それだけ重要なものだということだ』
クロノの言葉は若干の緊張と真剣さを混ぜてユーノに告げた。
『もう一度言う、今回の依頼は先日起きた“闇の天使”事件の件だ……』
「うん、情報もこっちに入ってる……このファイルだ」
ユーノはディスプレイを数回操作して、目的のファイルを開いた。
そこに表示された内容は、先日から数日前から管理局を騒がしている事件について書かれていた。
「第７１管理世界、第５６管理世界にあった研究施設が立て続けに襲撃された……」
『ああ、その通りだ。しかも最悪なことに、あるものが消失している』
「――レリック……」
レリック。
先のJS事件に大きく関わっていた、ロストロギア。
強大な力をもった、危険な代物でもある。
『今、管理局は先のJS事件のような事態になるのを恐れている……いや、場合によってはあの時以上の被害が出る可能性もある』
「――そう、だね……」
先の事件で調査を行ったユーノだからこそ、その恐ろしさが人一倍分かった。
アレは、使い方次第では凶悪な力に変わってしまうものなのだ。
『今回の事態に、多くの部隊が対応に当たることになっている。もちろん、機動六課にも対応してもらう』
「――そう。それで、僕は何を調べればいい？」
機動六課という言葉を聞いて、一瞬、昨日一緒にいたなのはの顔が浮かんだ。
心配という言葉が浮かんだが、ユーノは即座にその想いを消した。
心配をするなら、自分にできることをしようと思ったからだ。
それが結果として彼女の助けとなればいいのだ。
『君には襲撃者が使用したと思われる魔法、あるいは武装について調べてもらいたい』
「――魔法、武装？」
『ああ、僕も確認したが、かなり特徴のあるものだった。ここから犯人の特定につながればいいと思ってな……これを見てくれ――』
今まで見ていた資料とは別の画像がユーノの手もとのディスプレイに表示された。
そこに映っていたものはユーノから見て異質なものだった。
燃え盛り、崩れ落ちた建物。
夜空には、何事もなかったかのように瞬く星。
そしてその一角に映っていた。
――天使。
ユーノがもった第一印象はそれだった。
よく伝説やおとぎ話などで出てくる、天使をユーノは想像した。
夜空に映っていたものは、天使の翼らしきものをまとったナニカ。
そこに映った姿は小さく、顔までは見えないが、それでも感じる圧倒感。
しかし、ユーノが想像した天使とは決定的に違っているところがあった。
そう、その天使の翼と姿は真黒に染まっていたのだから。
『君には過去に似たような魔法・武装がなかったか調べてほしい……頼めるか？』
「ああ、わかったよ。できるだけやってみる……」
『そうか、では頼んだぞ――』
そう言って、クロノは通信を切った。
ユーノは早速、依頼された仕事をやろうと検索魔法を展開しようとした。
「――っ……」
急に違和感が襲い、ユーノは後ろを振り返った。
しかし、そこにあったものは変哲のない机と椅子だった。
「――気の、せいかな……」
感じた違和感は視線だった。
誰かが見ている、という漠然とした違和感。
「うー、しっかり休んだつもりだけど、疲れが抜けてないのかなぁ」
気を取り直して、ユーノはいくつもの検索魔法を展開した。
己の後ろの違和感を、気のせいだと無視をして。
――そう、彼女らは望まなくとも、世界は変わってゆく。
感想等お気軽にどうぞ。
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