――貴方がいた過去(きのう)

　――私たちがいる現在(いま)

　――黄色い花(なのはな)が咲く未来(あした)

魔法少女リリカルなのは　Eternal-Memory　　　　Epilogue　あれから

「――さぁ、やっと着いたよ」

　青い空の下、２０代前半、あるいは２０代後半くらいの女性が声を上げる。

　その女性の後ろには、二人の少女がいた。

「――わぁ、久しぶりだぁ」

　感嘆の声を上げたオッドアイの少女の目には、たくさんの黄色い花が写っている。

　少女は遅れてくるもう一人の幼い少女に声をかける。

「早くおいでよ、ゆのは――」

「待ってよ、ヴィヴィオお姉ちゃん――」

　呼ばれた少女の年のころは、５歳か６歳ほど。

　息をハアハアさせて、姉の元へと駆け寄って行く。

「わぁ、すっごく綺麗〜」

「ゆのはは、前に来たことがあるのを覚えているかな？」

　女性が少女に優しく質問をする。

　少女は元気よくそれに答える。

「覚えてる〜、ここは大切な場所ってママは言ってた」

「よくできました」

　優しく髪をなでられ、少女が目を細めて微笑む。

　幸せそうに、幸せそうに、微笑んでいる。

　彼女達の目に写るものは、黄色い花(なのはな)。

　どこまでも続くように咲き誇る菜の花。

「このお花はね……ママと同じ名前なんだよ」

「うん、知ってる。“なのはな”でしょ？」

「おー、よく知ってたね、ゆのは」

　ちょっと小馬鹿にした姉の態度に、幼い少女はム〜と頬を膨らませる。

「ばかにしないでよ、ヴィヴィオお姉ちゃん！」

「あはは、ごめん、ごめん」

　楽しそうにじゃれあう少女達。

　それを眺める女性。

　――ここは、私たちの大切な場所。

　――もうここには居ない、彼との大切な場所。

　――大切な約束を交わした場所。

「――風が気持ちいいよ」

　女性が子供達を見守りながら、小さく呟く。

「――ヴィヴィオも、ゆのはも……もちろん、私も元気だよ」

　言葉は風に流れて、消えてゆく。

　そして、届けばいいと想う。

　愛した彼の元へ。

「――貴方との約束も、ちゃんと守ってるよ」

　彼と一緒になってから、何度も来たこの場所で。

　誓い合った、ひとつの約束。

　それは彼のただひとつの願い。

　『幸せになって……誰よりも幸せに』

　ただ、それだけ。

「――みんな、幸せだよ……そう、私は誰よりも幸せだよ」

　彼と築いた絆の“かたち(ゆのは)”がここにあって。

　いくつもの想い出の記憶(ヴィヴィオ)を刻み込んで。

　わたし(なのは)はここまで来た。

「――ユーノ君……」

　愛しい彼の名前を。

　風に乗せて、空の果てへと運ぶ。

　――あれから。

　――短くて長い時間が過ぎました。

　――貴方は傍にはいないけれど。

　――永遠に残る想い出と、微笑みをくれる子供達が傍にいます。

　――貴方の姿は見ることは出来ないけれど。

　――貴方の愛をいつでも感じています。

　――貴方と紡いだ物語は、

　――想い出とともに、終わることなく、永遠に紡がれていきます。

　――最後に、もう一度、伝えます……

「――――だいすきだよ、ユーノくん……」

　Eternal-Memory is very long long Good-Bye.

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