「うーん、どうしようかなぁ……？」

　いくつもの雑誌が広げられたテーブルの上で、なのはは悩んでいた。

　広げられた雑誌の全てに茶色いお菓子、つまりチョコレートが載っていた。

「……なのはママ、何してるの？」

　なのはの横でヴィヴィオが興味深そうになのはを見ていた。

「えーとねぇ、明日はバレンタインって言ってね、女の子にとって特別な日なの」

「バレンタイン……何をするの？」

　なのはは人差し指をあごに当てながら、ヴィヴィオに説明するための言葉を捜す。

「女の子が、大好きな男の子にチョコレートをあげて、気持ちを伝えるんだよ」

「……きもち？」

「うんっ、“大好き”の気持ちを伝えるの」

　ニコニコと答えるなのはに、同じようにニコニコしながらヴィヴィオが言う。

「なのはママはユーノパパにあげるの？」

　頬を少し赤く染めて、なのはが少し照れながら答える。

「そのとおりだよ、ヴィヴィオ。よく分かったね」

「だって、なのはママはユーノパパのこと大好きだもんね」

「うふふ……うん、ママはユーノパパのことが大好きだよ。――もちろん、ヴィヴィオの事もね」

　なのはは先ほどより頬を赤く染めながら、ヴィヴィオのことを抱きしめる。

　ヴィヴィオも気持ちよさそうに目を細めながら言う。

「ヴィヴィオもユーノパパにチョコレートあげるー」

「きっと、ユーノ君は喜んでくれるよ」

「……で、なのはママは何を悩んでるの？」

　なのはは抱きしめていたヴィヴィオを離して、ヴィヴィオの疑問に答える。

「ユーノ君にね、どんなチョコレートをあげようかなと思ってね」

「ふーん、だけどたぶんね…………」

　ヴィヴィオは一旦、言葉を区切りなのはに頬ずりをする。

「――――なのはママからのチョコレートなら、なんでも喜んでくれるよ」

「……そうだね」

　明日は、バレンタイン。女の子にとって大切な日。

　次の日、なのはとヴィヴォオはユーノの部屋の前に来ていた。

「はい、ユーノパパ！」

　扉を開いたとたんに、元気な可愛らしい声を上げて、ヴィヴィオがユーノに小さな箱を手渡した。

　ユーノは久しぶりに会ったヴィヴィオの頭をなでながら、小さな箱を受け取った。

「うーん、ありがとう、ヴィヴィオ」

　ユーノは一度しゃがんで、ヴィヴィオを抱きかかえる。

　今日はバレンタイン。だから、ユーノにもこの小箱の意味をすぐに理解する事ができた。

「――ところでヴィヴィオは、バレンタインの意味を知っているのかな？」

「うんっ、しってるよー」

　ヴィヴィオは満面の笑みを浮かべて、ユーノを見つめる。

「ヴィヴィオは、ユーノパパの事が大好きだよ」

　そう言うと、ヴィヴィオはユーノの頬にチュッとキスをした。

「ヴィヴィオは本当にかわいいなぁ」

　そんなやり取りをする二人の姿は、本当の親子のように見えた。

　そして、その二人のやり取りを、なのはが顔を真っ赤にして見ていた。

「ユッ、ユーノ君！」

「なんだい、なのは……って！」

　いきなりユーノの目の前に、なのはの顔のどアップが映って、そして――。

　“チュッ”と、唇と唇が触れる音がした。

「な、なのは！　いきなりどうしたの！？」

「な、なんでもないの！　ただ……」

　顔をりんごのように真っ赤にさせて、小さく呟いた。

「ヴィヴィオばっかりじゃ、ずるいんじゃないかと……」

　可愛らしい声で、そんな事を呟くなのはを目の前にして、ユーノも顔を真っ赤にした。

「やっぱり、なのはママはユーノパパの事が大好きなんだね」

　ヴィヴィオが二人の様子を見て、そう言った。

　それからしばらく経ってから、ユーノとなのはの二人はベッドに腰掛けていた。

　ヴィヴィオはユーノのひざの上にちょこんと座っていて、とてもご満悦そうだった。

「……で、やっと本題なんだけどね」

「やっとなんだ……」

　ユーノは頬をかきながら、なのはの言葉を待つ。

「――これ、ユーノ君に」

「――うん、ありがとう」

　なのはからユーノに手渡されたのは、きれいにラッピングされたハート型のチョコレート。

　もちろん、なのはの手作りのチョコレートだった。

「――大好きだよ、なのは」

「――私もだよ、ユーノ君」

　チョコレートよりも甘い、甘い想いがそこには溢れていた。

　今日は、バレンタイン。女の子にとって大切な日。

 

ＥＮＤ

おまけ

　暗い部屋の真ん中で、二人の少女がお酒を飲んでいた。

「なにが『チョコレートよりも甘い、甘い想いがそこには溢れていた』やっ！」

　そう叫んで、もう一度グビグビっとお酒をのどに押し込む。

「これは、当て付けか！？　きっと、男のいないうちらへの当て付けなんや！」

「はやて、落ち着いてよ……それに飲みすぎだよ」

　どんどんお酒の缶を空にしていくはやてを止めようと、フェイトは言葉をかける。

　しかし、やはり酔っ払いというものは止まらない。

「こんなときは、飲むしかあらへんやろ！　ほら、フェイトちゃんも！」

「私はもう充分……って無理やり飲ませないでー」

　フェイトの言葉をまったく聞かず、はやてはフェイトの口にお酒を押し付ける。

「あー、うちも男がほしい〜」

「誰か、助けてー」

結局、二人は朝まで飲んでいた。

 
本当にＥＮＤ

あとがき
久しぶりのＳＳなので、おかしいところがあるかもしれないです……
話の内容としては、バレンタインとヴィヴィオにちょっと嫉妬するなのはです。
それにしても、ヴィヴィオの前で二人はイチャイチャしすぎですね、すこしは抑えてもらいたいものです。

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