「ねぇ〜まだぁ？」

「う〜ん、もうちょっとかな？」

　ミッドチルダの中央に位置するカフェになのはとヴィヴィオは来ていた。

　今日はユーノをあわせての三人でのお出かけだ。

　どうやらヴィヴィオはかなりのご機嫌らしい。

　昨日は中々寝付けなかったみたいだし、ユーノに会うのがすごく楽しみなようだ。

「……むぅ〜」

　ヴィヴィオが頬を膨らませてむっとしている。

　なのはは苦笑して、そんなヴィヴィオを見つめている。

　どうやらユーノ君は仕事で遅れているみたいだ、となのはは考えてみる。

　彼の仕事はとにかく忙しいのだ。時空管理局の中でも一番忙しい部署かもしれない。

　空はあいにくの曇り空。

　もしかしたら、雨が降ってくるかもしれない。そしたら最悪だ。

　そんなことを空を見ながらなのはは思った。

「――ごめんっ、お待たせ二人とも」

　息を切らせて、ユーノがカフェの中に飛び込んできた。

　本当に急いできたんだろう、その額には汗もにじんでいる。

「むぅ〜おそぉいー」

　ヴィヴィオがユーノを見て頬を膨らませている。

　だけどすぐに堪えきれなくなったのか、ユーノの胸に飛びついた。

「ごめん、ごめん……ヴィヴィオ」

　ユーノがヴィヴィオの頭をなでながら謝っている。

　本当に二人は仲がいい。まるで若い父親と子供のようだ。

　では自分は母親と見られているのだろうかと、そうだったら嬉しいなと、なのはは思う。

「ユーノ君……やっぱり仕事が忙しいの？」

「うん……だけどヴィヴィオと会うためなら仕事も早く終わらせるよ」

「……もうっ、だけど無理はダメだからね」

　なのははそんなことを言いながら、人差し指でユーノの頬を小突いた。

「……ねぇ、はやくいこ」

「うん、そうだね、ヴィヴィオ」

　外に出ると冷たい空気が三人をつつんだ。

　もう１２月だ。上着がないと肌寒く感じる。

「う〜ん、さむい〜」

　ヴィヴィオがそんなことをボヤキながら、なのはの袖にしがみついた。

　そんなヴィヴィオを見かねて、ユーノはあるものを取り出した。

「ヴィヴィオ、今日は君にプレゼントがあるんだ」

「なぁに〜」

　小さな紙袋をユーノは取り出してヴィヴィオに手渡した。

　ゴソゴソとヴィヴィオが紙袋を開けると、そこにはピンク色の可愛らしいマフラーがあった。

「わぁ〜、ありがとう、ユーノパパ」

「どういたしまして、ヴィヴィオ」

「ヴィヴィオ、良かったね」

　なのはがピンク色のマフラーを手に取り、ヴィヴィオの首に巻きつけてあげている。

　まるで、若い母と子供のようだ。

「……うん、よく似合っているよ」

　ヴィヴィオがマフラーに顔をうずめて笑っている。

　そんなヴィヴィオをなのはとユーノは温かく見守っていた。

　――ポツリ、と冷たいものがなのはの頬に当たった。

　なのはがパッと空を見上げると白いものが降ってくるのが見えた。

「……雪だ」

　空から白い雫がパラパラと降り注いでくる。

「……ほんとうだ」

　今年初めての雪は止まることなく降り注ぎ、辺りの風景を変えてゆく。

　町はわずかの時間で白一色に染め上げられていく。

「ゆきぃ〜、つめたぁい〜」

　ヴィヴィオが雪を見てはしゃいでいる。

　ミッドチルダでは雪は中々降らない。だから雪は珍しい。

　――ポツリ、ポツリと降る雪を見てユーノは想う。

　今までのこと。これからのこと。

　なのはのこと。ヴィヴィオのこと。自分のこと。

　手で触れてみれば溶けてしまう儚い雪。

　人の人生も同じで、儚く短いものだ。

　自分はなのはとヴィヴィオに何をしてあげられるのだろうか？

　なのはは自分と会って後悔をしていないだろうか？

　なのはやヴィヴィオを支えていくことが出来るのか？

　考えたらキリがないな……、とユーノは思い、考えるのをやめた。

　結局、今が幸せなら未来なんて関係ないのだ。

　明日のことなんて誰にもわからない、そんなのは当たり前のこと。

　なら、明日がもっと幸せになれるように今を生きればいい。

　雪か降り注ぐ公園で元気に遊ぶヴィヴィオと、その相手をしているなのはを見て、そんなことを思った。

　――いつまでも、この幸せが続きますように。

　END

あとがき
初めてなのはとユーノ以外のキャラを書いてみました。いつもよりは甘くなかったかな？

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